医王堂通信
としろぐ

高山病に対する漢方薬 立山黒部アルペンルートOct/2023

2024.2.5

去年、立山黒部アルペンルートに行った時に軽い高山病になりました。

その時の漢方薬の対応を動画にしました。

2023年10月8日は初雪でした。土曜日の仕事が終わった後、車で長野県「扇沢」で車中泊。朝一番に出発しました。

今回は時間がないので、室堂で軽くハイキングと立山ホテルに泊まることが目的です。

電気バスに乗り、黒部ダムの放水を見て、ケーブルカーで黒部平へ。天気は下り坂の予報でしたが、その前に紅葉がきれいな立山を眺めることができました。高山植物観察園もあり癒されました。

黒部平よりロープウェイとトローリーバスを乗り継ぎ室堂へ。室堂には前日の初雪による積雪がありました。雪は大好きなので、軽アイゼンをつけて歩きました。コロナ禍以降は運動不足だったため、徐々にからだを慣らしていくということと2500mと高地のために、まずは散歩程度、室堂の「みくりが池」を1周するコースにしました。

立山王道コース

立山から観光バスで来る海外からの観光客も非常に多く、とても寒いのに、靴や洋服はビショビショでしたがはしゃいでいましたね。ハイキングを終え立山ホテルにチェックインしビールを飲みました。

仕事後に運転し車中泊だったためか、また標高が高いせいか疲れた。。。酔ったせいかドキドキする。

脈が速い!まさか、風邪?インフルエンザ?それともコロナ??すこし熱っぽい??頭が重いし、軽くふらつく。

店頭では発熱している患者さんも診ているので、ここ数年神経質になっています。

東洋医学を学んでいる人は、自分の脈は体調の変化がわかるのでいつも気にしているはずです。しかし、脈拍数のわりに熱っぽくない。寒いが悪風(皮膚のザワザワ感)はない。鼻ものども無症状。

他に考えられるのは まさかの「高山病!!」

登山の時のドキドキには蟾酥(センソ)配合の「律鼓心」。どうき、息切れ、気つけに。律鼓心は心肺機能を助け、しかも即効性があるのでひとまず1回服用。普段でも数分で楽になる。しばらくたつと多少ドキドキは楽になりました。しかしいつものようには治まらない。

そしてどうしたものかとGoogle検索していたらそういえば、高山病に漢方薬「柴苓湯」を使うことを思い出しました。

昔、高地で有名な観光地、マチュピチュに行きたいから調べていた時の事です。

高山病は「山酔い」と言われるそうで、重度の高山病では「高地脳浮腫」「高地肺浮腫」が起こるそうです。最近では病院でも脳挫傷の時の脳浮腫に柴苓湯を使います。柴苓湯は小柴胡湯と五苓散の合方です。五苓散だけでも良いかもしれません。小柴胡湯との併用がどうなのかは意見が分かれることでしょう。しかし、吐き気、など胃腸症状、ひどいときは神経症状もあるでしょうから、小柴胡湯は併用でもよいでしょう。五苓散は、二日酔い、めまい、吐気、むくみ、下痢、熱中症によく使います。

私は、いつもたくさんの種類の漢方薬を持っていくので、自家製の五苓散(原末散)と小柴胡湯エキスを混ぜて柴苓湯を作り飲みました。30分もすると頭重、頭痛、ふらつきが楽になってきました。

せっかく立山ホテルに泊まり、星空を眺めながら夕食には本格フレンチディナーコースを楽しもうとしていたのに残念。高山病のせいで食欲はあまりなく、ドキドキ動悸はするし軽くめまいもする。まるで二日酔い。ワインで乾杯したかったが諦め、しかも夕食は半分くらいしか食べられませんでした。ホテルのレストランには私より年配者も多くいらしたが、皆さん夕食を楽しんでいらっしゃる。

その後、寝るまでに3回服用しさらに漢方薬が効いてきて頭痛、めまい、胃腸の具合がずいぶん楽になりました。漢方の即効性にはいつも脅かされます。気持ちも落ち込み、頭もまだ痛いし早く寝ることにした。さっさと寝ようとアップルウォッチでの血中酸素飽和度はなんと「79%‼」再び測るとエラーで測れず、脈拍は100。ちょっとやばいかな。。と心配しながらも楽になってきたので就寝。高山病がひどくなると眠れなくなるらしい。

朝には食欲もあり軽く食事もできて下山へ。恐るべし高山病。2450mほどでは大丈夫だと思っていたのに甘かった。10歳の時に登った穂高岳山荘2996Mでも高山病で一晩中苦しんだことを思いました。当時下山して数日後に腸閉塞で入院し緊急手術で小腸を1メートル切除しました。相当疲れていたのでしょう。無理は禁物です。

2023年5月に行ったフランスのAiguille du Midiは3842M、ツェルマットのMatterhorn Glacier Paradiseは3883Mに行ってきましたが、展望台ではハイキングをしないし長時間ではなかったため、酸素が少なく少し苦しく、階段を急いで上るとふらつく程度でした。標高を下げるとすぐに復活します。しかし、観光客の中には倒れている女性もいましたから気をつけなければなりません。室堂の標高は2500Mなのですぐに症状も出なかったし、少しづつ辛くなってきたという事と、宿泊客ではない普段着の観光客がたくさんいたので、気が緩んだのかもしれません。

柴苓湯をなぜ高山病に使うのかよくわからなかったが、実際に経験してみると、なるほど納得します。運動不足、寝不足、急に標高を上げての長時間滞在、アルコールなど高山病になる要因はたくさんあります。私は胃腸が弱く痩せているため、「血虚」「血が少ない」事が根本的な原因と考えられます。

五苓散を使うという事は「血」の材料である「水」の偏在が高所では起こるのでしょう。実感として苓桂朮甘湯も検討する必要があります。しかし旅行には急性症状用の漢方薬しか持っていかないので、陽病に効く処方が中心になります。自分のからだで高山病のテストはしたくありませんが、機会があれば試します。

登山家に対して蟾酥(センソ)製剤のテストをして、高所障害に効果があるという事を聞いています。登山家はトレーニングされたアスリートです。一般の人達とは違いがあります。そこをわきまえたうえで、自然薬をうまく使うと、事故や病気の予防や改善が期待できます。芍薬甘草湯もその一つです。即効性があります。

今回は軽い高山病だったが勉強になりました。まだまだ修行が足りません。

健康のために自然に触れ、からだを動かしましょう。ただし自然は優しいだけではないので気をつけましょう。準備が大切です。

としお