漢方の力で「熱中症、日射病」対策しましょ
最近日本の夏は暑い暑い暑い。私が子供の頃は30度を超える日がひと夏に数日しかありませんでした。暑い季節に南国の海外旅行へ行っても、日本よりも涼しいと感じることが多くあります。とくに湿気が多いのが蒸し暑さの原因の1つです。
2006年にドバイの海へ行った時は気温42度、湿度100%で海水は温泉プールのようでびっくりしました。日が沈んでから買い物に出かける。砂漠地帯はすごかった記憶があります。
日本の梅雨は1年の中で暑がりの人が一番つらい時期になります。その暑さ故、水が必要とされますので、水分が過剰になりやすく、むくみ、めまい、あせも、関節痛のご相談が一気に増えます。
漢方薬はからだのアンバランスをなくし、病気を治します。熱があれば冷やす、冷えていれば温める、乾いていれば潤す、湿気ていれば乾かす、「中庸」を目指し整えていきます。そのため、皆さんが想像しているよりも様々な病状に使用されます。
では、熱中症、日射病にはどう対応するか。夏は暑さという熱にさらされます。するとからだは冷やさなければ困るので汗をかきます。その汗(水分)が皮膚の熱を奪ってからだが冷えます。原因が違いますが風邪の時に発汗して解熱するという事に似ています。しかし空気中に湿気が多いとなかなか水分(汗)が蒸発しません。という事は冷えない。汗がダラダラで暑い。という事になります。
水分を飲むと胃腸が水分を処理しないといけなくなるので、エネルギーを使います。そのため疲れますし、胃腸の弱い方は胃がぽちゃぽちゃになってしまい、食欲低下が起こります。冷たい飲み物や食べ物は胃を冷やし血流を悪くするため胃の動きが悪くなります。すると食事量が減り、飲み物も減るので、その結果からだは急激に渇き、食べ物から頂いていたエネルギーも減少してしまうので、元気がなくなり、熱中症、まっしぐらになります。お年寄りは保水力が乏しいのでもともと脱水傾向です。それにエネルギーも少ないためすぐに元気がなくなり、暑さに耐えられないというのは自然の摂理(陰と陽のバランス)です。
逆に赤ちゃんはエネルギーが多いため、代謝が良く熱い。そのためみずみずしいですね。これも陰と陽のバランスです。赤ちゃんのほうが自然に対する対応は早いでしょうが、経験値が少なく、お年寄りは逆に経験値が豊富です。これも自然の摂理ですね。
話がそれましたが、上記のような現象になるので、漢方では食欲低下、元気不足、軽い乾燥傾向であれば、麦門冬、五味子で潤し、汗を整え、朝鮮人参で巡らす「生脈散」、これは3種類の薬草だけでシンプルなので効果に切れ味がります。もしくは「麦門冬湯」。同じような状態で息が切れる場合は「竹葉石膏湯」、さらに熱さがひどく、汗が多く、水分を飲んでも飲んでものどが渇き、からだが熱い、という時は「白虎加人参湯」。皮膚あたりの熱(粘膜の裏あたり)を冷やす薬草が石膏です。石膏は石なので冷やす性質があります。この熱(体温ではありません)がない方には石膏は使いません。話がそれますが、新型コロナで肺をやられたときにも竹葉石膏湯がよく効きます。麦門冬湯では消炎作用と潤す作用が足りないから、症状のひどい人には少ししか効きません。新型コロナは特に肺の奥からのどまでの粘膜の炎症、乾燥や、高熱による脱水をおこします。
熱中症でもっと状態が悪く、めまい、頭痛、むくみ、口の渇き、小便が少ないなどの場合は「五苓散」、元気がなくなり、食欲も落ち、出かけられないくらいエネルギーが低下してしまった場合は「人参湯」で胃腸を温め元気を出します。他には即効性は劣るが予防的に使われるのは「補中益気湯」や「清暑益気湯」あたりを検討します。あとは体質やその時のからだの状態や環境に対して、今後どうなるのかを予測して処方を考える必要があります。
上の写真は石膏です。
重要なのは東洋医学的な判断です。ご自分のからだの事は東洋医学の専門家に相談してください。からだの状態を聞いてそれにピタッと合わせると、びっくりするほど効果を現わします。もちろん煎じ薬のほうが効果は早く切れ味抜群です。
漢方薬は作成された時代背景があり、古典的な漢方処方のほうが薬味の種類が少なく、そのため効果が早くスパッと効く傾向があります。それゆえに使い方に気を使う一面があります。それが私たちの先輩方が伝承してきた「日本漢方」です。古典的な処方よりも比較的新しい時代にできた処方は薬味の種類が多く、使いやすい面がありますが、わかりにくいという事もあります。重要なことは古典的な漢方薬が基本となっていることです。私は状況に合わせて使い分けています。現代の中医学とは違うものです。
漢方薬は効かせるもの。漢方の勉強とは「自然の摂理」自然界のルールを学ぶことなので、理解するには時間がかかります。でもとても楽しい。現在、のんびりですが勉強を始めて30年です。
飛行機B747の写真は2014年セントマーティン島 Saint-Martin Maho-Beach
KLMの747は現在飛んでいません。
としお