医王堂通信
としろぐ

「雨にもまけず」宮沢 賢治

2015.8.31

「雨にもまけず」宮沢 賢治
雨にもまけず
風にもまけず
雪にも夏の暑さにもまけぬ
丈夫なからだをもち
慾はなく
決して瞋らず
いつもしづかにわらつている
一日に玄米四合と
味噌と少しの野菜をたべ
あらゆることを
じぶんをかんじょうに入れずに
よくみききしわかり
そしてわすれず
野原の松の林の蔭の
小さな萱ぶき小屋にいて
東に病気の子供あれば
行つて看病してやり
西に疲れた母あれば
行つてその稲の束を負ひ
南に死にそうな人あれば
行つてこはがらなくてもいいといひ
北にけんくわやそしようがあれば
つまらないからやめろといひ
ひでりのときはなみだをながし
さむさのなつはおろおろあるき
みんなにでくのぼーとよばれ
ほめられもせず
くにもされず
さういうものに
わたしはなりたい