医王堂通信
としろぐ

ステロイドは悪か?

2007.2.23

ステロイドは悪か?
アトピービジネスでは、「ステロイドが毒だ」「ステロイドを使っているせいでアトピーが治らない」などとステロイドを悪者にします。では本当にステロイドはよくない物なのでしょうか?
少なくともステロイドというお薬ができて以来、病名にかかわらず相当多くの命が救われているでしょう。そのような点は西洋医学のすばらしいところだと、私は思います。
アトピーや痒み、炎症にはステロイドをよく使います。塗っているうちだけは症状が抑えられているが、塗らなくなると悪くなる。つまり、一時的に症状を抑えて楽になる場合もあるが、そうではない場合もあるのです。一時的だとしても、症状を抑えることは大事なことです。ただ、ずっと抑えていても良くならない場合もあります。
だから、つらい症状:たとえば、顔の痒みがひどいとか、ジクジクして洋服も着られないとか、痒くて痒くて眠れないなど、どうしようもない症状をとりあえず、ステロイドを上手に使って、さらに悪化するのをストップさせて、症状を抑えている間に、カラダの根本バランスをとっていく漢方薬を使いながら、体調を整えていく事が必要だと、私は思っています。
それでは、西洋医学(ステロイド)と東洋医学(漢方薬)では、アトピーや痒みに対してのとらえかたは、どのように違うのでしょう?
西洋医学的な考えでは、痒いところや、アトピーの患部にカユミや炎症の原因があるから、それを取り除いたり、抑えたりするのですが、東洋医学(漢方薬)的な考えでは、皮膚の病は、内臓の病として考えております。それらの症状は、カラダのバランスが良くないためにおこっているのだと考え、バランスを正すことで結果的に、カユミや炎症が減っていくという考えですので、漢方薬自身が皮膚のカユミや炎症の原因を取り除いたり、抑えたりするのではありません。
一般的な西洋薬では、ステロイドのように、化学的に説明のつくような、単一の成分を使用しているので、シャープな切れ味、効き目があると、考えられています。逆に、漢方薬は、生薬というものを体質・症状により組み合わせたバランスのよい薬であり、自然と良くなっていくと考えられています。
西洋薬は、薬というよりも、物質という捕らえ方をした方がわかり易いですね。たいてい、どの物質も飲んだり、塗ったりしてから、30分くらいで吸収されて、そのままか、もしくは肝臓で代謝されて血液の中に入り、ある程度の量が血液の中にある間にカユミや炎症が収まったり、熱が下がったりして、効いているという仕組みです。その後再び肝臓にて処理され、おしっこやウンチなどで体の外に捨てられると効き目がなくなってきます。薬の効いている間に、症状のもとを自分の体力で治すことに期待して、使用されています。
つまり、西洋薬は、病気の種類や、炎症の種類によって、一時的に使うとそれっきりで良くなることもありますが、ずっと使い続けないとだめな場合もあるのです。
逆に、漢方薬は、薬というよりも、体に良い食事だと考えた方がわかり易いです。西洋薬と同じように体に吸収され、出て行きますが、カラダのバランスを調節して、自分がもっている力(治癒力)を補っていくというものです。
人によって違いますが、ステロイドは怖いから、毒だからといって弱いステロイドを長く使うよりも、強めのステロイドを短期間だけとか、症状がひどい所だけに使うというやり方も必要です。これは「つらい時間(=ストレス)を減らす」ということも大事だという意味です。
ステロイドが良いとか悪いとかよく言われますが、問題なのは、お薬に対して、お薬を出す人(お医者さん、薬剤師)と、お薬を使う人(患者さん)のどちらにも、理解が足りないような気がします。「社会や制度などが悪い」と言ったらそれまでなので、深くは言いませんが、自分も含めてみんなに言えることだと、私は思います。
ステロイドに対する問題は“説明不足”“使う意味”“使い方”等いろいろあります。もちろん!専門家がちゃんと説明する事は義務ですが、心配なときには、お医者さんや薬剤師にたずねること。病気はくすりを塗るだけ、飲むだけでは根本的には治りません。患者さん本人が自分で治すものです。患者さん本人の訴えに対して、どれだけ 最善、最良の治療、お薬を選ぶか?が医療関係者の務めだと思っています。