生姜の不思議な効果
このLOTの生姜はちょっと色が悪いので気になりますが、比較してみました。左が生姜を乾燥した生姜、右が蒸してから乾燥した乾姜です。飴色になり熱が加わった証拠です。
最近生姜が流行っていて、お客様からもよく質問を受けます。
生姜はお腹を温めるので、昔から冷やすものを食べる時は必ず薬味として一緒に食べました。お寿司のガリ、冷奴の生姜などです。
東洋医学の考えかたですと、生姜は生姜でも「生の生姜」と、「蒸した生姜」では意味が違います。「生の生姜」は「生姜」ショウキョウ、「蒸した生姜」は「乾姜」カンキョウまたは「炮姜」ホウキョウ、といいます。
漢方の処方でも「生姜」を入れる処方と「乾姜」を入れる処方があります。同じ生姜ですが、この二つには大きな違いがあります。「生姜」は皮膚や粘膜などのからだの浅いところを温めます。「乾姜」は内臓や下半身などからだの深いところを温めるといわれています。そのため、初期の風邪の時の葛根湯などは風邪が表面にあるので、生姜を入れます。手足が冷えている人などの下痢の処方で人参湯がありますが、これはからだの深いところ、内臓が冷えている状態なので、乾姜を使います。生姜と乾姜両方入れる生姜瀉心湯という処方もあります。つわりに使う乾姜人参半夏丸は蒸した生姜と半夏と朝鮮人参を生姜のしぼり汁で丸薬にします。同じ生姜でも加工法で使う意味が違ってくるのです。
漢方の場合は、生姜は他の薬草と協力して相乗効果を発揮します。例えば生姜と仲が良いのは大棗(なつめ)です。生姜で胃を温めなつめの甘さと栄養で元気になります。
生姜は天日で干しますと、太陽の陽気を浴びて水分が減り、陽気が増え辛味成分も増えて温める力が強くなることがわかっています。生姜を蒸して加熱するとじっくりと奥底から温めてくれるようになります。よく干しシイタケも天日で干すとうまみ成分が増えるといいますね。

乾した生姜や蒸した生姜は辛味は強いですが、すりおろした生姜や市販の生姜末とは比べ物にならないほどカラダが温まります。葛湯に入れたり、紅茶に入れたり、お料理の調味料としてもおいしくいただけます。ぜひご賞味下さい。このように同じ食べ物でも加工法によって性質が変わります。まさしく人間の知恵です。料理も工夫して寒い冬を乗り越えましょう。
なお、夏にお腹を冷やした人は、次の冬は冷えで困るでしょうから、生姜や葱などを召し上がると良いでしょう。ただし、全ての人が冷え性というわけでないので、冷えて困っていない人に大量に辛味の物(生姜)を使うと肺を温めすぎ、肝を弱らしてしまいます。なんでも程々にしましょう。
「生姜」
ひね生姜のことなり。辛味強気品なれば大小いずれにても可なり。又必ず「ひね」すなわち親生姜を用ふべし。若き子供生姜は気味薄し効劣る。ひねの新しくて充実したる物を用ふべし、陳久品(古いもの)にして多量の水を含みたる物(最近の中国産のような水っぽい生姜)。。は使用し難し。気を扶け外を実す。これ生姜の発汗薬に多く用ひらるる所以なり。
「生姜と乾姜との違い」
生の生姜と乾かしたる生姜とは元一物にして薬効大いに異なる、自然の妙用まことに窮究し難きもの多し、而して乾姜の場合は散辛化して歛辛となる、生姜は進むることを主どり乾姜は守ることを主どる、萬物の變化まことに計り知るべからざる所あり、乾姜は深きを温むる効あり、故に厥を回し下痢を止め嘔を治す。
古方家の生薬バイブル「新古方薬囊」荒木性次先生著より抜粋