漢方の臨床2024年2月号に掲載
1954年に創刊された漢方を継承する歴史ある学会誌「漢方の臨床」2024年2月号に掲載されました。私にとってこれは先生に「書きなさい」と言われている漢方の修行の1つです。2010年から続けています。
内容は象形薬理論と性質がわかりにくい「防已」について書きました。私が勉強不足という事が大前提ですが、植物の性質、性格を把握することは非常の難しい事です。生えている場所や旬の季節、その色や形、生薬として使われる部位、加工法、などすべて「意味」があります。漢方薬はそれら個性のある植物の集合体ですので、効果と一言でいう事は難しい事です。効果の一面を一つの病気に対してと考えてしまうと、治療できる世界が狭くなってしまい治せない病気が多くなります。
例えば今回の防已が含まれる代表的な処方は防己黄耆湯です。ドラッグストアで売られている効能は、「むくみやすい人のためのダイエット漢方」です。これは間違ってはいませんが、むくみにもいろいろと原因がありますので、その原因に漢方の理論が合わないとまるで効果を発揮しません。服用してみて効果がないとしたら、それは間違っているか、不足があるか、時間が必要か、養生していないせいなのかなど、別の理由が考えられます。漢方薬が効かないなどありえません。防己黄耆湯はむくんで太っているいる人専用ではありませんので、やせている人にも使います。防己黄耆湯の効果のほんの一面でしかありません。
むくみに使用される漢方は多数あり、そんなに簡単にむくみが取れて体重が減るわけがありません。ただしピタッと症状にあうと1回の服用でもわかるほど効果は鋭いです。ダイエット薬と勘違いしないようにしてくださいね。上記のように生活習慣が原因で体重を気にしている方がいらっしゃいますが、生活習慣という原因を何とかしないと、ダイエットして体重が落ちてもその時だけで、またすぐに元に戻ります。リバウンドではありませんよ。太っている理由があるからです。
保険用のツムラの防己黄耆湯の効能効果を例に出します。
色白で筋肉軟らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症: 腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰囊水腫、肥満症、関節炎、癰、癤、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順
今の西洋医学中心の保険医療では細かく専門分野がわかれているので、上記の症状では腎臓内科、婦人科、整形外科、循環器科、皮膚科、内科にお世話になる事でしょう。しかしその中の一人の先生がこの処方を出してくださったら、すべての症状が防己黄耆湯だけで良くなることがあるという事です。
象形薬理論は自然界を観察することです。人も、植物も、動物も、水も、石も存在している理由があり、それをうまく使いバランスをとると、バランスが悪い状態である「病気」は改善します。
長くなってしまうので、この辺にします。
「自然の法則を理解することは非常に難しい」