医王堂通信
としろぐ

漢方の合宿に行ってきました。

2023.10.4

私は1999年より日本古方漢方を学ぶ会「方術信和会」でお世話になっております。漢方の古典を長年続けて読み、山へ行き薬草を観察し、薬草を泊りがけで加工し、店頭で漢方相談をし、手作りの漢方薬を患者さんに提供しているという会は、会組織としては歴史のある方術信和会だけではないのでしょうか。要するに「修行」といわれる学び方です。なんと、このような会の学術副会長に4年前より就任いたしました。ちなみにすごく勉強しているという理由ではございません。

漢方の漢文で書かれている古書を読むと、どうしても眠くなってしまいます。しかしフィールドワークはハイキングのようで好きでした。私が幼い頃は、登山が大好きだった父や母に連れられ、漢方の重鎮である著名な先生方とともに薬草採集に行っていました。薬草は生えている場所を観察し、旬の季節、色や形、使われる部位を知ることによりその薬効が見えてきます。見て、触って、味見して、五感を駆使して学びます。

「漢方家」と言われる先生は昔から自然の摂理を自然の中で学んできました。

病人を癒すという事は、その方のバランスが良い方へ導くという事です。病気だけではなく、人のからだだけではなく、薬草だけではなく、成分だけではなく、お薬だけではなく、性格や心の状態、普段の生活、季節など「自然の摂理」を理解したうえで検討することが必要です。これはとても大切なことであります。しかし非常に難しい事でもあります。

漢方を上手く使えるようになるには、センスや努力により違いますが長い長い年月がかかります。

そのため方術信和会はご高齢になっても学んでいる方が多くいらっしゃいます。私のとって大事な会なのです。

前置きが長くなりましたが、方術信和会の皆さんと10月23日、24日に伊吹山へ行ってきました。

伊吹山は日本百名山の1つで、古来より著名な薬草や亜高山植物、野鳥、昆虫の宝庫としても有名で、一度行ってみたかったところです。牧野富太郎先生も訪れた薬草の聖地と言われる伊吹山。立地も特徴があり、そこに生息している動植物にも特徴が備わります。私たち生き物は生きるために、自然に対して適応しなければならないからです。イブキトリカブト・アキノキリンソウ・イブキアザミ・シロヨメナ・リンドウ・イブキヨモギ・ゲンノショウコが開花していました。漢方薬のなかでも特に重要な薬草の1つであり、私が好きな「とりかぶと」は、風が強いせいか他の地域よりも小さく、しかし紫色が濃くしっかりしていました。美しい。

日本の3大民間薬は「どくだみ」、「げんのしょうこ」、「せんぶり」です。「げんのしょうこ」が可愛く咲いていました。しかも白い花と赤い花が同じ場所でみられました。「げんのしょうこ」は下痢など整腸作用が有名ですが、不妊症に「はぶ茶」と一緒に煎じてお茶として使われます。

「かきどうし」は身近な植物です。生薬名は「連銭草」、別名「かんとりそう」シソ科の植物なので薄荷、紫蘇系のスーッとさっぱりする香りが特徴です。子供の疳の虫に使われました。利尿作用もあるので、むくみや結石にお茶として使われます。わたしも好きでたまにお茶として飲んでいます。気持ちがサッパリします。

伊吹山のふもと揖斐川町春日村で、なるべく自然に薬草を育てている方にお話を伺いました。

漢方薬というよりは民間薬が中心の学びになりましたが、貴重なお話でした。今回もよい修行となりました。

としお