医王堂通信
としろぐ

「高麗人参・朝鮮人参・薬用人参」蘇る若さ・気力の源 その1

2024.1.29

高麗人参、朝鮮人参、薬用人参は基本的には同じものです。朝鮮人参は漢方薬では薬用人参として日常的に使います。朝鮮人参は医薬品だけでなく、食品としても販売が許可されているので、さまざまな滋養強壮剤、サプリメントなど元気にする目的のほとんどの製品に配合されます。しかし、血圧が上がってしまうというような、からだにあわない場合もありますので、相談してから服用しましょう。

古くから朝鮮人参は強壮薬の代表とされるもので、精神的にも肉体的にも活力を増強し、不老長寿、強精などを目的として利用されてきていますが、体内の新陳代謝機能の増進や内分泌の促進、精神安定作用、中枢興奮作用など広い薬効が知られています。漢方では朝鮮人参は他の薬草と組み合わされ、様々な効果を現わします。

「人参七効説」

#1補気救脱 気力・体力を補い、疲労回復し抵抗力を上げます。

#2健脾止瀉 胃腸を丈夫にし、消化機能を助けます。

#3益血復脈 血液を作り、流れを良くします。血栓の予防になります。

#4養心安神 心臓の働きを助け、自律神経の乱れを調整します。

#5生津止渇 水分のバランスを整え身体を潤します。血糖値を安定させます。

#6補肺定喘 呼吸を安定させて、喘息などのアレルギー反応を抑えます。

#7托毒合瘡 体内の毒を出し、新陳代謝を促進し、老化防止します。

朝鮮人参は様々な効果を期待できますが、基本的には「気を巡らす」作用です。皆さんは朝鮮人参を飲むと温まるというイメージの方が多いと思います。しかし、古典的な生薬の分類では甘微寒といわれ温める種類ではありません。しかし、胃腸の働きを良くし、気力を増し、エネルギーを巡らすことができますので、結果的に冷えている人は温まる。元気になる。ということです。

私が弟子入りしている方術信和会の大師匠である荒木朴庵先生著の新古方薬嚢にはこう書かれています。

「本経に曰く、味甘微寒、五臓を補ひ精神を安んじ魂魄を定め驚悸を止どめ邪気を除き目を明らかにし心を開き智を益すことを主どり、久しく服すれば身を軽くし年を延ぶと。」

「薬徴に曰く、主治心下痞堅、痞鞭、支結なり傍ら旁ら不食嘔吐喜唾、心痛、腹痛、煩悸を治すと。」「ボク曰く渇きを潤し、しぶりを緩む。故に心下痞、痞堅、身痛、下痢、喜嘔、心痛、其の他を治す。」

ちょっと難しいですね。漢文は眠くなってしまいます。

北茨城の田畑隆一郎先生の言葉でいうと、「陽気を引き起こし血脈を通わせる。心下痞鞕を解す。脾胃虚弱を治す。」です。

朝鮮人参はそれだけでも効果は抜群ですが、東洋医学の古典では人参だけではなく他の薬草と組み合わせて使います。

「乾姜・人参」「生姜・人参」温めながら巡らす 人参湯のように胃腸の働きを良くする

「黄芩・人参」冷やしながら巡らす 小柴胡湯のようにこもった熱を冷ます

「麦門冬・人参」潤しながら巡らす 麦門冬湯のように津液を増やす

他には「牛黄と人参」牛黄は牛の胆石で貴重な生薬です。作用は開竅作用、穴を開く、詰まっているところを開いて通す作用です。そこに朝鮮人参の巡らす作用が足されると、開いて(牛黄)+巡らせる(朝鮮人参)作用になります。

巡る力がある場合は人参は使わずに牛黄だけでもスーッと詰まりが抜けて、熱が下がったり、痛みや苦しい事が嘘のように改善することもあります。そのため、コロナやインフルエンザや風邪の初期の発熱時には、楽になったり、スーッと解熱することがあるのです。このように、時には朝鮮人参がなくてもよいことがあります。老人やひどく弱っている時は、牛黄だけでは症状が取れないときなどは朝鮮人参が必須になります。

他には栄養的な生薬と一緒に使う場合です。朝鮮人参は巡らせて温めてという作用ですから、元気の少ない、何かを運んだり作ったりする「力」が少ない状態に使われます。病中、病後、術後、疲労時です。「気力」というエネルギーが少ないことが続くと、からだに栄養もいきわたらず栄養失調、貧血傾向になります。すると瘦せ細り力が出なくなります。このように、朝鮮人参は栄養剤的な生薬と一緒に使われることが多くなります。栄養的な生薬とは、棗、当帰、芍薬、よもぎ、地黄、阿膠、はちみつなどです。

一見いろいろと配合されている漢方処方のほうが効きそうですが、必要のない生薬がある場合にはその漢方薬の効き目は悪くなります。それは過剰にある事もよくなく、ちょうど良いバランスをとることが一番大事です。栄養過多の人に栄養剤のような漢方薬を使っても、さらに元気になるはずがありません。

日本漢方は現代の中医学と違い、中国の古典医学なので、生薬配合種類も量も少なくシンプルです。そのためとてもシャープに効きます。日本漢方は1回の服用でも病状が改善することがよくあります。そのため、漢方を長年勉強し腕を磨き、病気のからだのバランスを理解できないと、即効の効果を出しにくい傾向があります。私は父の代より日本漢方を中心に処方しています。

当店で正規取り扱いの商品のなかで朝鮮人参が配合されているのはこちらです。

「霊黄参」「霊鹿参」「救心感応丸気」「律鼓心」「能活精「亀鹿霊仙廣」救心製薬

「レオピンロイヤル」「レオピンファイブNEO」湧永製薬

「松寿仙」「紫華栄」和漢薬研究所

「瓊玉膏」栃本天海堂

「若甦シリーズ」日邦薬品

他にも多くありますが、滋養強壮という効能効果で許可をとっている製品にとって朝鮮人参は必須生薬なのです。