医王堂通信
としろぐ

人間の性?

2007.6.8

約2000年前に書かれた漢方の古典「傷寒論」を、古方の流派としては基本の教科書としています。そこには漢方薬や病気のことだけでなく、養生のこと、自然のこと、季節のこと、心がけのことや歴史まで書かれています。
傷寒論のはじめには傷寒雑病論集の序文があります。漢方を学んでいる人は必ず読んでいるはずで、とても重要な事が書かれています。気になるところを抜粋してみました。
自分自身を健康にし、長生をして、命を養おうとしないで、ただ争って世の権勢や富豪に愛顧をうけ、寝るときも寝ないで、ただ名を売ること、利を得る事に夢中になっているありさまは、表面だけを貴びかざって、根本的に大切な事を捨ててしまい、その外見だけを派手やかにして、内面を、即ち身体を疲れさせてしまう。皮膚がなくては毛はいったいどこにつくのでしょうか。(これはたとえを言っているので、身体の内臓がしっかりしていなければいったいどうするのだということ)
このように生命を軽じてしまうのに、彼を何で栄勢といえるだろうか。しかも進んで人の事を考えてあげる事もできず、振り返っては自分自身のことをもできず、災難につきあたり身体が危ない場所にありながら、一向にそれには気がつかず、ぼんやりしている様子は魂の抜け殻のようである。悲しいではないか、今の世の人々はうわべをかざって、あせり競って根本を固めようとしない。身命を忘れて物欲になれきってしまうような危険な事は、氷の谷のあたりにいるようなものである。(薄い氷のはっている上を歩いているような危なっかしい状態のこと)
「傷寒論解説 解釈 藤本 肇先生著 より抜粋させていただきました。」
この傷寒論序文は中国語の漢文なので、解釈が難しいですが非常に身にしみる文です。結局今も昔も、人は変わっていないのですね。
なかなか正しく生きるということは難しいと思いますが、読むたびに気をつけなければと思っています。
最近のテレビのCMは保険のCMが多く目にします。病気になってからお金が出るように保険をかけることも大事だと思いますが、自分は医療者として少しでも病気になりにくい身体作りのお手伝いが出来たらと思っております。
未病という言葉がありますが、本格的な病気になる前、病名がつく前に治しておくということが大事なことと思います。このようなときは漢方薬・自然薬の出番です。
病気になってからでも、もちろん漢方薬で対処できますが、早い段階(病が浅い・時間がたっていない・若い)で服用した方が早くよくなります。