たんぽぽ「蒲公英」
タンポポコーヒーを作るにあたり、いろいろと研究しました。
漢方医学の世界では、タンポポの生薬名は「蒲公英」、その根は「蒲公英根」と言います。
中国の薬草の古書には「新修本草(659年)」には「味は甘く、平、無毒。婦人の乳腺炎によし」とあり、「中華人民共和国薬典(2005年)」には、清熱解毒(熱毒による発熱や炎症を止める)、消腫散結、利尿通淋、目赤、咽痛、と炎症性の病気に使われていて、現代の西洋では、便秘、浮腫、肝臓病、利胆作用を応用した治療法に使われているそうです。
タンポポはヨーロッパでも身近な植物です。セイヨウタンポポの英名はライオンの牙のような葉の形から、ダンデライオン(dandelion),おしっこが出やすくなることより、フランス名はピッサンリ(pissenlit),属名のTaraxacumはアラビア語で「苦い草」(tharakchakon)に由来し,利尿,苦味薬として親しまれてきました。古くからヨーロッパ諸国でも薬局方薬物として確立され,現在でもハンガリー,ポーランド,ソビエト連邦,スイス薬局方などに収載されているなど,ヨーロッパで最も身近で有用な薬用植物となっているそうでうす。西洋タンポポなどの外来種は、明治時代の頃に、食用のため、また乳牛の母乳の出を良くするために飼料とするために輸入されたと言われています。
日本でも子供の頃から私達の身近にあるタンポポは、西洋タンポポなどの外来種と、関東タンポポや関西タンポポなどの在来種に分けられ、土壌の質などの環境により分布が違うため、環境の変化を指標とするために調査される植物です。在来種のタンポポは春に開花し、その後、種が熟すため休眠しますが、西洋タンポポは休眠もせず、四季咲きで刈られても、すぐに新しい葉を出すほど繁殖力が強く、どこでも生きていけるため、日本では西洋タンポポが広範囲に広がっています。
日本では、平安時代の日本最古のお薬の辞典、本草書と言われる「本草和名」にも収載され、昔から薬草として大切にされてきた、という歴史があります。
一般に「蒲公英根」と称して根だけが用いられ,従来は主として関西タンポ(T.japonicum)が香川県や徳島県で採集されてきました。しかし,近年は外来種の西洋タンポポ(T.officinale)の生育量が増え,薬用に利用されるようになっています。
味は甘いというより、少し苦みがあるため、戦後は貴重で高級なコーヒーの代用品として、タンポポの根を焙煎し、コーヒーとして飲まれたようです。
もともと味が苦い植物の多くは、胃腸の働きを良くする、便通を良くする、肝臓の働きを良くする、という作用が知られています。
タンポポのことが書かれている他のホームページには、からだを温めると書いてあることがありますが、今までのタンポポの利用目的を考えると、からだを温める性質の植物とは考えにくく、温めも冷やしもしない(平)、または多少なりとも冷やす性質(清熱)と考えられます。しかし焙煎して熱を加えると、冷やす性質は弱くなり、安心して毎日飲めるようになります。
ウチダ和漢薬「和漢薬」より引用