医王堂通信
としろぐ

春ウコンと秋ウコン、ガジュツ

2006.11.29

最近流行のウコンですが、情報が氾濫していて何が本当なのか知りたくて調べてみました。

種子島薬用植物栽培試験場は、昭和29年熱帯・亜熱帯系薬用植物の試験研究を目的に設置された。場所は鹿児島県種子島のほぼ中央で、種子島空港に隣接している。
島は夏涼しく、冬あたたかいという温和な気候である。
広さは約11ヘクタールあり、この広大な研究を今回お世話になった香月茂樹先生お一人で、管理されているようです。ちなみに先生は、自分が大学で勉強した時の植物学の教科書の筆者でもあります。そこで今回は先生の専門のウコンについて検討してみました。

ウコンとは 熱帯アジアを原産地とするショウガ科クルクマ属に分類されるウコン(学術名;Curcma longa L.)は、
熱帯性植物でインド、中国南部、台湾、日本などに自生しているとされています。
沖縄では、琉球王朝時代より、民間薬として受け継がれており、その根茎にはミネラルなどの健康に不可欠な成分が多く含まれ、優れた効能があることが知られていました。
また、カレー粉の黄色い色素はウコンの色素成分クルクミンで、ウコンのことを英語ではターメリックと呼んでいます。

現在、ウコンは『秋ウコン』 『春ウコン』 『紫ウコン』の3つの呼び名で、3種類あるようにいわれていますが、優れた生薬として、また食用や染料として古くから利用され琉球王朝の財政を支えたのは『秋ウコン』と呼ばれるもので、本来のウコンとはこの秋ウコンのことを指します。

秋ウコン(学術名:Curcuma Longa L.)秋に白い花をつけ根茎がオレンジ色となります。

一方、春ウコン(学術名;Curcuma‘aromtica S.)は春に赤みのある花をつけ根茎が黄色で、本来は『キョウオウ』と呼ばれるものです。

秋ウコンと春ウコンは見た目では違いはわかりません。
しかし触ってみると、春ウコンは葉の裏側に毛が生えています。
秋ウコンはツルツルです。

また紫ウコン(学術名;Curcuma zedoaria R.)は根茎が紫がかった白色で一般に『ガジュツ』と呼ばれています。

見た目には春ウコン、秋ウコン同様見分けはほとんどつきませんが、ガジュツだけは紫ウコンという名の由来どおり葉の中心のすじが紫色をしています。

キョウオウとガジュッはウコンに形状が似ていることから、俗称として春ウコンとか紫ウコンと呼ばれているのです。
これら3つの区別には、その黄色色素成分であるクルクミンの含有量が指標となります。 これらの3種類をクルクミンの含有量で整理しますと、ウコン=秋ウコン(3.6%)キョウオウ=春ウコン(0.3%)ガジュツ=紫ウコン(0%) となります。
すなわち、根茎の色で区別が容易になります。
一目でウコンとキョウオウやガジュツとの違いが分かる根茎の色は、黄色の色素であるクルクミンの含有量によって決まります。
黄色の色素がびっしり詰まっているウコンは、黄色というよりオレンジ色に近くなり、クルクミン含有量の少ないキョウオウは色が薄くなります。
根茎の色が濃ければ濃い(オレンジ色に近くなる)ほどクルクミン含有量は多くなります。
味はウコンに比べキョウオウのほうが、より強い苦みがあります。

ウコンに含まれる黄色い色素クルクミンや精油成分には、現在の代表的な病気である生活習慣病に極めて高い効能があることが、判明してきています。
例えば,ウコンは利胆薬として肝炎、胆道炎、胆石症、カタル性黄疸に用いられるほか、芳香性健胃薬として用いられています。
また、ウコンの粉末を水で練り、痔、すり傷、膿腫、関節炎等に外用します。東洋医学ではウコンは冷やすといわれ、だれもが大量に飲んでも大丈夫とは言っておりません。
ガジュツもほぼ同じく芳香性の胃薬です。昔の本には、胃腸に停滞するガスを排泄し、鎮痛、去痰の効があると書かれています。また、月経不順を治し、月経を通ずる効があるそうです。

このようにウコンもガジュツも消化を促進し、肝臓を強化してくれるようです。胆汁を増やせば油物の消化も早くなりますので。ただ、だからといって漢方薬にはかないませんし、訳のわからないものよりは良いとは思いますが、たくさん飲んだからといって簡単に飲むだけでダイエットなどにはつながらないと思います。注意しなければならないことは、文献によっては「妊婦は禁忌」と書いている本もあるので、むやみやたらに飲んではいけませんよ。

ちなみにガジュツは屋久島・種子島で多く栽培され、恵命我神散に昆布末と一緒に入っています。苦いですよ。

3月31日のスパスパ人間学でも取り上げていましたが、ダイエットに。。ガジュツは胃と肝臓に作用するので、便秘がちの人は多少良いはずです。そうすれば体重もウエストも減るでしょうね。しかし全員ではないと思いますし、ガジュツだけがそういう作用持っている特別なものではありませんので、注意しましょうね。

香月先生もおっしゃっていましたが、
「最近の薬学は理屈ばかりで、実物を「観る」「触る」「味わう」ことを教えていないから、おかしな健康食品や間違った情報等、氾濫するのではないか?あなた達薬剤師は、もっと植物と仲良くなり、そして理解するような勉強をするようにがんばりなさい」
と耳が痛い思いでした。
今回もとても勉強になりました。これからも精進していきたいと思います。

漢方薬・生薬認定薬剤師 飯田敏雄